「でも楽しみだねー、はんごうすいさん」
「…やっと覚えたんだもんねーココちゃん」
直哉はあれから何も言わないココが少し気がかりだった。
忘れたわけではないと思う。もしかしたらマシロが戻ってきたのかもしれない…とも思ったが、それはないだろうと思った。特に理由はないけれど…漠然と、そんな気がする。
しかし、直哉はココにマシロの事を聞けずにいた。罪悪感がないといったら、それは嘘になるからだ。
「やったー!到着だー!」
何も変わらなく見えるココの笑顔を見ながら抱くのは、薄暗い曇り空のようにただそこに居座る暗い気持ち。後悔…しているのだろうか。
いや、そんなことはないと、直哉は自分に言い聞かす。
そんなことない。ココのためにはこれがよかったんだ。マシロはいずれーー消えることに、なるのだから。
影が足りてるか、それを尋ねた時から気になっていた事実。そしてそれはココの知ることのない、紛れもない事実だった。



