ココとマシロ



居なくて当たり前。確かに、マシロが傍にいるのは自分だけだ。それに皆にはマシロが見えない。それはつまり、マシロが見えなくて当たり前という事。


「それってみんなと同じって事?そしたらココ…変われる?」


変われるかどうか、そんな事は誰かが分かるものでも無いとは思うが、尋ねるココに直哉は告げた。「変われるよ」と。でないとココは、このままだろうと思ったからだ。この一言が背を押すならそれで良いと思った。

そして案の定、直哉が言ったその言葉はココの胸に刺さった。ココは思う。そうだった、ココは変わらなきゃいけないんだった。だからマシロにその話をして…マシロは、居なくなったんだ。


「マシロだってココが変わるために居なくなったんじゃないか?それってココが変わるきっかけをくれたって事じゃねぇの?」


ーーマシロは、ココが変わるきっかけをくれた。マシロはきっと、ココが変わるために力を貸してくれている。


…そっか。きっとそうだ。

だったらココは、メソメソなんてしてられない。


「…変わるよ、ココ…わたし、大人になるよ」


この日、ココは決意した。しかしその決意は直哉によって導かれたものなのか、それとも自ら意思で決める事が出来たものなのか。

それは、誰にも知られる事のない決意の裏側にある真実だった。