その言葉は、影の持ち主へと向けられたもの。

そんなココを見て、「ココは馬鹿だなぁ」と微笑んだあの日を、マシロは今でもしっかりと覚えているし、ココ自身もこの時の辛さは影を見る度に思い出す。

だから――


なんか…黒い影、多いなぁ……


つい心配になり、目で追ってしまう。


転入生というものは、どの学校でも期間の差があるにしろ注目されるものだ。まだ転校二日目のココも、もちろんその一人。
今日はよく話し掛けられ、沢山の人に出会えた。
そしてそれに比例して、黒い影も周りに集まる。

だからココは初めての経験に嬉しく思いつつも、気持ちが黒い影に持っていかれ、つい目はそれらを追ってしまっていた。


ココがそれに気付いたのは、「ココちゃん何を見てるの?」と尋ねられた時だった。


「あ、ご、ごめんね!なんでもない!」