17歳の不良と6歳の殺し屋

それから、雫は随分と大人しくなった。
荒い呼吸もないし、体も脱力しきっていた。
そんな雫を到着した救護班は抱き上げて車に乗せ、雫の家に向かいながら手当てを施した。

雫が乗った車を残った翡翠とハリスは豆粒のように小さくなっていくまで見送っていた。
ボッとライターの火をつけるとハリスは煙草を吸いだした。


「どうだった?」

ハリスは二、三回肺に煙草の煙を押し込むと雫に語りかけた。
二人はもう見えなくなった車の方向を見つめている。
ハリスに問いに雫は静かに答える。


「ヒヨコではあるけど…中々ね」

「ヒヨコ…ねえ~?」

ハリスはクックックと引きつる笑いを零した。



「あの、化けモン染みた戦い方をする奴が“ヒヨコ”ですかい?」


ハリスの嘲るかのような物言いに翡翠はクスリと笑った。


「まだまだUna ragazza debole(弱き少女)ね。私からしてみれば」

「ひゅー!こわぁ」

二人はクスクス笑いながら歩き出す。


「準備は?」

「ったりめーだろ」

ハリスがガッツポーズをする。


「ハリス」

「ん?」