17歳の不良と6歳の殺し屋

雫はバッと顔を上げた。その聞き覚えのある声に。

「ひすいっ?!」

掠れた声が飛び出し、また少し遠くの方で「俺もいるぞ~」とハリスの声も聞こえて来た。

「なんで…ここに…?」

「お前を待ってたんだけど、たまたま幼虫を見つけたから追ってみたの」


雫には今翡翠の顔は見れないが、なんとなく笑っていると想像がついた。

「あ~あ。俺のコレクションナイフがぁ~……」

ハリスはがっくりうな垂れる。
翡翠はそんなハリスを見て溜息を吐いた。


「そんな安物どうだっていいでしょうが。さっさと連絡しなさい」

「どうでもって…!…わかったよぉ…」


ハリスはピピッと高速で携帯を打つと、どこかに連絡を取り始めた。


「すぐに来てくれ。救護班も忘れるな」


これでよし、とハリスは電話を切った。

「よしよし、待ってな雫。もうすぐ迎えが来るからな!」

そう言って雫の頭をガシガシ撫でる。
いつもなら睨むか払いのけるかするのだが、生憎体が動かない。ささやかな抵抗に唸ってみせるが意味はやはりなかった。
そんな雫に翡翠は優しく言葉を投げかける。


「雫、お前の毒はうちの救護班で治せるわ。家まで送るから心配しないでね」