17歳の不良と6歳の殺し屋

ハリスはポカンとした間抜けな顔になった。
先程から遠まわしに言われる台詞にイライラとして来ていた。

「私、雫がナイフを持っていたからそのナイフを弾こうとして銃を撃ったの。でもね…」


「…まさか……そのまま、当たってもナイフを離さなかったとでも言うのか…?」

「ビンゴ!察しがいいじゃない」

ニコッと笑う翡翠にハリスは頭を抱えた。

「でもよ…本人の意思はどうなんだ?そんな好戦的には…」


「アイツはとんでもないよ…。まさにUomo-mangiando」

翡翠の言葉はイタリア語だ。それを読み取ったハリスはタラリと冷や汗を流した。


「…人食い……?」



「よくわかりました」

「…俺の生まれ育った国だぞ」

「そういえば…」

翡翠は上手くハリスとの話題を避けたようだった。今も「雫遅いな~」と呑気に、楽しそうに言っている。


だが、その眼は少女の微笑みのそれではない事をハリスは知っている。
獲物を待つ肉食獣の様だと思う。それも喰うためではない。ただ狩りを楽しむような。


それから、二人は黙って雫が来るのを待っていた。