【短】ワガママ男とわがまま女



「サヤ...」

「ユカちゃんを、好きになったのかと思った。」


さっきのなっっさけない顔から、もういつもの爽やかフェイスに戻ってる樹。


ズルイ。

バカで、ワガママで。

ワケわかんないこと平気でやっちゃうような男で、大っ嫌いだって思ったのに。

やっぱり好きなんだもん。バカ野郎。


「サヤ、オレが悪かった。許して?」


すぐ近くに歩いて来て、しゃがみこんで、俯くわたしの頬に触れるあたたかい手のひら。

顔を上げて見た樹の顔は、

不安げに眉をひそめ、わたしを真っ直ぐに見つめる瞳は、雨の中捨てられて段ボールに入れられたワンコみたくウッルウルしてて。


不覚にも、ドキっとしてしまったわたし。


正真正銘のオトコなのに...、

カワイイ。ズルイ。カワイイ。

許したくなっちゃうじゃん。