【短】ワガママ男とわがまま女



「...悪かったよ、サヤ。」


無視を決め込むわたしへ、樹が暗いトーンで話し出す。

ここにわたしがいること、信じて疑ってない様子。

まぁ、実際いるんだけど...。


何でも樹に見透かされてることが、今は無性に腹が立つ。

樹はわたしをよく知ってるから、わたしが今何を思っているのかなんて、手に取るようにわかるんだろう。

わたしは樹がわからないから、悔しいよ。



「オレ、態度には出さなかった......ってか出したくなかっただけなんだけど。 ずっと不安だったんだ。」



.........え? あの樹が?

悩みなんてないでーす、って顔したいかにもお気楽男の樹が?


......不安?


わたしはちゃんと樹の声が聞こえるように、抜き足差し足忍び足でドアに近寄って、耳を傾けた。