無我夢中で走って、三階の女子トイレに駆け込む。
足だけは速いわたし。
わたし同様、樹だって速く走ることなんてお手の物だけど。
上り階段は得意じゃないこと...、わたしは知ってるから。
静寂の女子トイレに、わたしの荒い息遣いだけがやけに響く。
「サヤ!」
バタバタと走る足音が聞こえたと思ったらわたしの名前を呼ぶ声が聞こえ、
授業中なのにも関わらずバンバン女子トイレのドアを叩く......、樹。
「そこにいるのはわかってんだぞ! 出て来い!」
刑事ドラマなんかでよく聞く、お決まりのセリフ。
わたしは、立てこもる犯人役ですか?
はたまた、あんたは刑事役ですか?
...ダテに一年も付き合ってない。
樹もわたしも、お互いの行動パターンなんかを熟知してる。
まぁ樹の性格上、どんな状況であっても女子トイレのドアを開けるなんてことは絶対しない。
ぜっったい、出てやらないんだから!

