【短】ワガママ男とわがまま女



「てゆーか、別れたかったんだったらちゃんと言えば? そりゃ、こんなわたしなんかより、ユカちゃんの方が可愛いもんねっ。」

「んなこと思ってねぇよ? サヤは可愛い」

「は? 可愛くなんてないし」

「可愛いって」

「やめてよ!」


意味不明な言い合い。


ほんっっと、何なの?


他の子にデレデレしてたと思えば、

わたしのこと『可愛い』なんて言う。


樹は良かれと思って言ってるんだろうけど...

お世辞にしか聞こえないし...、

今は、余計に虚しくなるよ。



「...もう樹とは別れる。 思う存分、ユカちゃんとラブラブしてれば? ボケ樹!」

「ちょ......サヤっ!」


もう、樹の前から消えたい。

衝動的にそう告げたわたしは、引き止めようとする樹の腕をすり抜けて、陸上選手張りに全力疾走で保健室から逃げ出した。