【短】ワガママ男とわがまま女



「答えろよ、サヤ!」

「......っつ...」


樹の指が肩に食い込んで、鈍い痛みに思わず顔を歪める。


こんな樹、初めて見た。

怒ってるような、悲しんでるような、切ないような、複雑な表情。



「...嫌だったに決まってるじゃん!」


思いっきり、手を振りほどいた。

痛いくらいにこめられた手の力は、意外とあっさり離れて。


わたしはなんだか泣きそうになりながら、言葉を続ける。



「樹が他の子といて...嫌な気分にならない方がおかしいでしょ!?

わかりきってること聞かないで...!」