夕暮れ時のオレンジっぽい光がやわらかく差し込む部屋。

学校の机の中はいつも乱雑に教科書やらが押し込まれてるくせに、いつ来たってここは乱れた場所が見当たらないってくらい小綺麗にしてある。

ここは一応わたしの彼氏っていうポジションの男、樹(いつき)の部屋で。


「サヤ、暇なんだけど」


一切口を開かず、マンガを読み耽るわたしの頬っぺたをツンツンつついてくる樹。


「ウザイからやめて」


マンガのページから視線を変えずに、キッパリ言い放ってやるのはいつものこと。


「相変わらず冷たいな、サヤは」


こんなちっとも可愛くないわたしに、いっつもさわやかに笑う樹。



普段、さわやかボーイな樹だけど。

本性はものすごくワガママな男なんだ。

(ってわたしも樹に負けてないくらい、わがままなんだけどね)