ちょっと経ってから、雑木林のほうから公園に行き、塀からひょぃっと顔を出すと、ベンチにはちゃんと赤い物体が置いてあった。
良かった。
あたしは塀をまたいで、ベンチへ向かい、ランドセルを背負い、黄色い帽子をかぶり、正面から公園を出て帰宅した。
その日以来、一旦家に帰って玄関にランドセルを置いてから、公園の塀をのぼるようになった。
一回目は注意されて失敗したけど、二回目は何も言われず公園一周を達成した。
小さい子たちにはまじまじと何をやっているのだろうと奇妙な顔で見られてしまったが、公園一周を達成し、塀からジャンプしたあたしは記者からインタビューを受けてもいいような偉大な旅を果たした気分だ。
しかし、その塀上りはすぐにマイブームが去った。
昔から飽きっぽいあたしだから仕方ない。



