でも、きっと全てじゃない。
そうじゃなきゃ、こんなに周りを気にしながら塀にのぼらないのだから。
「コラ!危ないからのぼっちゃダメでしょ!」
ぞろぞろとありの行列のように帰っていく生徒のほうから声が聞こえた。
振り向くと、下の学年の先生があたしを睨みつけていた。
「今すぐ下りてきなさい」
うわぁ。
あたしは捕まったら怒られると思い、公園の反対側に下りた。
そして、草むらを走り出す。
公園の反対側は小さな雑木林となっていて、それを過ぎると住宅地。
あたしは住宅地に潜り込んでからホッと一息すると、ハッと気がついた。
ランドセルと帽子を忘れた!



