「もう真姫ったら。またボーっとしてたの?」


千春がポッキーを持って休み時間に私の席へとやって来てそう言った。
顔はまだ微かに笑っている。


「また悪い癖が出ちゃったみたい」

「何でもジッと見る癖?」

「うん。そう」


直さないとね。と言いながら千春は高橋君の席に座った。

高橋君は隣りのクラスにいる彼女のもとへ駆け付けるため、休み時間にはほとんど教室にいない。


「高橋君てさ、今の彼女と長いよね」

「あー、美咲ちゃんだったっけ。1年の頃から付き合ってるから約2年半くらいだね」

「よく続くね」


千春は首を傾げて持ってきたポッキーを食べながら心底不思議そうに言った。
千春は恋多き女ですぐに惚れては、すぐ付き合い、すぐに別れる。
というサイクルをずっと続けていた。


「千春は続かなさ過ぎるんじゃない?」

「あたしは恋愛経験を豊富にして生きてく女なの」


そう言い切った千春の顔は誇らしげだった。


「真姫はどうなの?」

「何が?」

「やだ、ユキ君とよ」


千春は「もう。照れちゃって」と言いながらバシバシと私の肩を叩いた。
私は苦笑いしながら「そんなんじゃないよ」と軽く流した。

私と幸宏は愛だの恋だの、、そんな関係じゃない。


私は天使の梯子がかかる空を見上げた。