雲だけの空は、何て地味なんだろう。
まるで私みたい。

私は黒板の前で必死に数式を教える教師を尻目にジッと空を見つめていた。

何かを見つめるのも私の癖の一つだ。


「いいか。ここは試験に出るぞ」


教師のそんな言葉を気にもせず、ただ空を見上げていた。


「小田さん、小田さん」

「え?」

「先生が呼んでるよ」


隣りの席の高橋君が私の右腕を突き、前を指差した。
高橋君の指先を見た私の目に腕を組んでこちらを見ている教師の姿が入った。

どうやら何度も私の名前を呼んでいたらしい。


「そんなに私の授業はつまらないか?」

「いえ。すいません」


ペコっと私が頭を下げたのを確認すると教師は「座れ」と言い、黒板に向き直った。

教室の隅で友達の千春がコソコソと笑い、声に出さず「ドジ」と言っていたのが見えた。


―またやってしまった。