ミモザの呼ぶ声

 オレはアトリエを後にして、その足で美優のいる病棟へと面会に行った。
 美優。オレが仇を討ってやる。決めたんだ、必ずと。
 一人、個室にたたずむ美優はこちらに気付きもしない。薄紙くらいの存在感で、細い手足ばかりか全体に肉付きが薄く、のぞき込んでみると瞳ばかりが大きく虚空を見つめ……。
 母が用意したシフォンのワンピースはそのまま丸イスの上。
 真っ白な顔をして、病院から借りた車椅子で窓辺にたたずんでいた。オレは微かな、いや身を苛む絶対的な失望を感じた。

「おまえはだれだ……? 美優はそんなんじゃなかった。違うだろ。なあ、オレ達の未来はこんなんじゃなかったはずだろ」