そのどちらでもなかった。つかみかかってきたのだ。

「俺の絵! またおまえが隠したのか!」

 そいつは怒鳴りつけた。なんだなんだ、いつもと違うなあ。以前ならまっすぐ探しに行くとこだ。見つけて戻って来ても充分時間はあるのに。下手こいたな、トリウミ……。
「俺」「また」「おまえ」「隠した」のか、だと?
 当たり前だよ、優等生さま。
 このドス黒い怨念を見たか?
 おまえも冷たい鬼になれるか? 苛烈な鬼に。
 なってみせろ! なってみやがれ! なってやれ! オマエを育てた親に親族に、申し訳のひとつも言ってな! そしてオレを殺してみろ! その眼でオレの心臓を貫いてみろ!  自分を恐怖するくらい、恐怖できるくらい、立派な鬼になってみろよ、なあ! このオレのように!