カタッ 鞄の中に入れて置いた箱が音を立てた。 転がったのだろう。 もともと鞄の中身はその箱位しか入ってない。 今まで転がらなかったのが不思議なくらいだ。 僕はそっと箱をテーブルの上に置いた。 初めて開くときは君がいるときと決めていたけど。 君といるときにはもう開けることは無さそうだから。 僕は慣れない手つきで箱を開けた。 「…渡せなかったな」 箱の中身は君に渡すはずだった指輪。 僕は君にプロポーズするつもりだったんだ。