仁兄の優しい笑顔…あたしを見つめる豪の漆黒の瞳…目を閉じれば、二人の事が浮かんでは消えてゆく。



「あたしは…どうしたらいい…」



呟いてみても、誰かが答えてくれる訳もなく、あたしはため息を吐いた。



――――…
―――…
――…



どれぐらい時間が過ぎただろうか…?



考えているうちに、眠ってしまったらしいあたしは、ソファーに横になっていた。



「…ん………?」



葵か龍也のどちらかのだろう、あたしに上着が掛けられていた。



上着から″ふっ″と香った豪とは違う香りに、何故だか切なくなった。



―豪に会いたい―



仁兄を大切に思う気持は、今でも変わらない…でも、豪を思う気持ちは別の感情だった。


思えば初めから、あたしは豪に惹かれていたのかもしれない。