「あいつの思いは此処にある」



龍也の言葉はあたしの心に突き刺さる。



「仁が居なくなった後、あやめさんを守るのは俺達だって思ったんだ、でも君は姿を消した…見つけ出し見守っていたのに君は豪と…」



そう話す葵が悔しそうに顔を歪めた。



あたしはどうしたらいいか解らず、俯いてしまった。



「あの日…何時ものように"じゃあなっ"て…笑って走る去る仁を見たのが…最後だった」



仁兄は此処からの帰り路、事故に巻きこまれた。



学校の行事で街を離れていたあたしは、仁兄の最期の瞬間に間に合わなかった。



冷たくなった仁兄を受け入れるのは難しく、思考は停止し涙も声も出ずにいた。



あたしはただ…ぼぅっと、横たわる彼のそばに座っていただけ。



ザーザーと降りしきる雨音だけを聞きながら…。