「私ね?誰かを本気で好きになったことなんてないんだ…。今までそんな余裕なかったし。だからこれからもないと思う…」
「……美弦は消極的ね…」
話はそのくらいで引き上げて私達は店を出た。
外に出るとむっとした暑さが私を包み込む。
空は雲ひとつない青空で、
髪をなびかせる風は否応がなしに夏を感じさせた。
「じゃあまた明日」
「バイバーイ」
駅の改札で凪ちゃんと別れる。
もうすぐ夏休みか…。
愁先輩とも会えなくなる長い長い休み。
凪ちゃんにはああ言ったけど私にとって愁先輩ってどんな存在なんだろう…?
あの学校で初めて気を許せた人?
ただの先輩?
それとも――…。
その考えを振り払うように頭を振る。
キキーッと耳障りな音をたてて電車がホームに入ってきた。
私は何も考えずにその電車に飛び乗った―…。



