「ええっと…!!家の事情で…?」
私の口からこの場を切り抜ける上手い説明が出来るはずもなく、語尾が疑問形になってしまった。
周りの子達はふぅんと納得…してくれたかな…?
大原さんも取り囲まれてるってことは高校入学組なのかなぁ…?
中等部に居たらみんな知ってるはずだよね。
こんなに目立つし…。
そんな事をボケッと考えていたらチャイムが鳴った。
よかった…。
質問責めから解放されホッとひと安心。
授業中が一番平和かもしれない…。
心身ともに疲れる休み時間だった。
そんな私を癒すかのように風が吹き抜ける。
病院で感じた風よりも遥かに暖かくなっていた。
今日で紘一さんの家に引き取られて1ヶ月―…。
それは則ち、お母さんが亡くなってから1ヶ月経ったことを意味する。
月日が経つのは本当に早い―…。
1ヶ月前まで私は恐怖に押しつぶされていた。
どんどん進行していくお母さんの病気。
迫る、孤独…。
お母さんがいなくなったら私はひとりぼっちなんだと思ってた――…。
紘一さんのお陰かな?
今、こんな穏やかな気持ちでいられるのは―…。
気がつくと授業も終わり、昼休みのチャイムが鳴っていた。



