「お母さんには勇気がなかったの。紘一さんに嫌われるのが怖くて先に逃げ出してしまった。でもね?死んだ今になって思うの…。あの時、紘一さんに向き合っていればもう少し幸せになれたのかなって―…」
お母さんも後悔してるんだ…。
紘一さんと離れたこと。
幸せの道を自ら外れたこと。
私といた時もそうやって考えていたの…?
「だからね。美弦には後悔して欲しくないの。幸せは自分で掴むものなのよ?最後にこれが言いたかったの…」
お母さんは私から一歩離れて寂しそうに笑った。
「さ…いご…?」
「そう最後。お母さんはもう行かなくちゃ」
「待ってっ!!まだ一緒にいたいよっ!!」
そこに確かにいるはずなのに手を伸ばしでも届かない」
「美弦、お願いがあるの。幸せにしてあげて?美弦が大切だと思った人達を…」
段々とお母さんの姿が薄くなっていく―――…。
「待って――っ!!」
そう叫ぶ自分の声で目が覚めた。
いつもと同じ天井だった。
お母さんの姿はどこにもない…。
「ゆめ…?」
なんだ…夢か…。
でもなぜ…?
心が暖かい―…。
それにほっぺたも痛い―…。
頬に手をやる。
ホントにどうしてなんだろうね?
お母さん…?



