「危なかったのよ?あの時、たまたま私が来なかったらどうなってたか…」


凪ちゃんは私の頭を優しく何回も撫でる。


その言葉にホッとしてポロッと一粒、涙が零れ落ちた。


「わ…たし…っ…!!」


怖かった…。


愁以外の人の手があんなに気持ち悪いなんて知らなかった。


「美弦…大丈夫だよ…」


凪ちゃんはそっと肩を抱いてくれた。


「うあああああ――――っ!!」


覚悟は決めていたはずだった。


この身体ひとつ差し出すだけでことが済むなら容易いと思っていた。


…予想外だったのはこの想い。


愁じゃなきゃだめなんだ。


まだ好きなんだ―…。


諦めたはずだったのに。


「美弦…寝たほうがいい…あんたには時間が必要よ…」


そう言って凪ちゃんは私を再びベッドに寝かせた。


目を瞑ってしまえば愁の顔が浮かんでくることはわかっていた。


でも今の私には夢の中の愁の温もりだけが唯一の救いだった―…。