「…ん……」


コトンと何かの音がして私はうっすらと目を開いた。


ここどこ…?


資料室の埃っぽい床の上ではない。


体にかかる重みは温かく、背にコンクリートの冷たい感触はなかった。


見覚えのある天井に次第に意識がはっきりしていく。


あれっ…ここって…。


「美弦っ!!」

肩を揺らされてその存在に気がつく。


「…凪ちゃん?」


目の前には凪ちゃんの整った顔が迫っていた。


普段は誰もが見惚れる笑顔なのに今はそれが歪んでいる。


「もうバカ!!美弦はいっつも心配かけるんだからっ!!」


頬に貼られた絆創膏が自分の行為の愚かさを改めて痛感させた。


「…ごめんね」


凪ちゃんの手の温かみがひどく懐かしい気がした。


「気持ち悪くない?どっか痛いところは?あんた一晩中寝てたんだよ?」


そんなに…?


周りを見渡す。


私は見慣れた高梨家の自室に寝かされていた。


白石に体を触られて頭を殴られた…。


それから…?


気絶して…。


だめだ…。


思い出せない―…。