あっ…だめ…。


頭の奥がジンジンする―…。


待って…まだ…だめなの…っ…。


そう思えば思うほど視界が暗くなっていく。


このまま意識を失えばどうなるかは明白だった。


「しゅ…う…」


ごめんね…。


無理だった…。


忘れるなんて無理だった―…。


ホントは全部覚えてる。


初めて会った時のことも。


手を繋いだことも。


愛してくれたことも。


全部、忘れることの出来ない私の一部だから。


あんな風に人を想えるなんて知らなかった。


本当に大好きだった―…。














「ご…めんね…」


そう呟いて意識を手放す。


最後に私が聞いたのはドアが開く微かな物音だった―…。