「あのさ…違うから…」
愁は拭き終わった食器を棚に戻しながら言った。
「あ―…確かに彼女はいたけど、美弦とは全然違うから」
愁は照れくさそうに私に笑顔を向ける。
「何が違うの…?」
私は一旦洗いものの手をとめ愁の言葉の続きを待った。
「ん―?なんていうか…心かな?」
「心?」
「そう。適当な女と適当に付き合ってた時とは違うんだよな…。穏やかっていうか…落ち着くっていうか…」
そう言って愁は私の腰に手を回して体を引き寄せた。
「あの頃は…こんなに安心して心を預けられる人がこの世にいるなんて知らなかった」
愁は頬に、瞼に小さなキスをくれた。
私も…愁がいいな…。
背中に腕をまわして体をあずける。
昔の彼女なんてどうでもよくなっていた。
今この場にいる愁が私を望んでくれるならそれでいいじゃない?
いつのまに欲張りになったんだろう?
「片付けよ?」
「うんっ!!」
私の機嫌が直ったところで片付けを再開した。



