「愁がその日以来甘えてくるっていうか…。いや嬉しいんだよ?でも心配なんだよね…」
美弦は中身の入ってないカップに自分の顔を映し出していた。
いや、自分の顔すらも見えていないのかもしれない。
この場にいない高屋先輩に、その心に想いを馳せている。
高屋先輩は全くと言っていいほど弱音を吐かない。
いや、吐けない。
育った環境が彼をそうさせてしまったから。
高屋家は敵が多い。
隙を見せたらすぐにつけこまれる。
美弦に甘えるっていうことはよい傾向なのかもしれない。
私はゆっくりと息を吸った。
「高屋 夏輝 23歳。現在、アメリカの高屋グループの関連企業に武者修行中。独身。数年前までこの人が高屋グループの実質的な後継ぎだった訳ね。その経営手腕はなかなかなものよ」
まあ、並以上には…ね…。
スラスラと頭の中から情報を引き出すと美弦が感心したようにほうっと息を吐く。
「よく知ってるね…」
「当然よ」
というか高屋さんと付き合っててこの程度のことも知らないあんたに私のほうが驚きよ。
大体あの学校に居る以上この程度の知識はないといけないはずなのに…。
紘一さんめ…。
わざと教えなかったな…。



