ああ美味しい…。
高梨家の紅茶は相変わらず絶品だった。
庶民のティーパックでは絶対出せない味についついおかわりの手が伸びる。
一緒に出された焼き菓子も焼きたてで香ばしい匂いが漂っている。
美弦はいつもこんなものを食べてるのかしら?
…羨ましい奴。
そう思って美弦の顔を見ると、のほほんとした顔つきでカップに紅茶を注いでいるところだった。
「どうしたの?」
「なんでもない」
一瞬でも美弦を羨ましいと思ってしまったことなんか絶対に言えない。
「ついに美弦も初体験か…」
もしかしたら娘を持つ母親の気分ってこんな感じだったのかしら?
ゴホッ!!
私の発言に美弦が紅茶を吐き出した。
「なっ凪ちゃん!!ちゃんと話、聞いてた!?」
「聞いてたわよ?イブに高屋先輩の家に行って、え「うひゃああ―!!」
美弦は慌てて私の口を両手で塞いだ。
「聞いてたって最後の部分だけじゃないっ!!」
「失礼ね。聞いてたわよ、最初から最後まで。ただ私にとって重要だったのがその部分だけってこと」
お陰でこんな所で美味しいティータイムが過ごせたわけなんだけど。
それにしても。
「高屋先輩に何されたのかなー?」
美弦にこんな約束をさせるなんてあの高屋さんもやるじゃない。
ジェントルマンな顔してなーにしたんだか。
ニヤニヤと洩れる笑いを隠しもせずに反応を待つ。



