私は目の当たりにした出来事になんとも言えないため息をついた。
「美弦…確認していい…?」
「どうぞ…」
私を呼ぶくらいなんだから相当困ってたんだろうな…。
周辺の空気が淀んでいる。
というか汚染されてるな、これ。
私は仕方なく負のオーラを発している人物に近づいた。
「あの隅っこで体育座りしながら何事かぶつぶつ呟いてるのは…」
あっ。
こっち見た。
「高梨カンパニー現社長。実力、ルックスともに今注目。ちなみに独身の…」
何かこれ以上言うのやだなあ…。
あまりの情けなさに会社の今後が悔やまれる。
「高梨 紘一、35歳。でいいのよね…?」
「おっしゃる通りです…」
紘一さんは部屋の片隅に体育座りで座っていた。
時折、渇いた笑い声やズビズビと鼻を啜る音が聞こえる。
あ…頭が痛い…。
私は思わず手のひらで顔を覆った。
「ねえ…帰っていい…?」
ごめん、これ無理だわ。
「お願いっ!!それだけはやめて―!!」
紘一さんからクルリと背を向けた私の背中に美弦が抱きつく。
美弦が半泣きになって頼むんだから仕方ない。



