らっく!!



「美弦っ!!」


いつもより幾分派手な音をして扉が開いた。


リビングから美弦が走り出しくる。


「愁…。おかえりなさい…」


黒いものが一瞬で吹き飛んだ。


もうどうしようもないんだ―…。


俺は笑顔で迎えてくれた美弦を抱きしめた。


「ただいま…」


良かった…。


飲み込まれずに帰ってこれた―…。


「愁…大丈夫…?」


美弦は心配そうに俺の背中に手を回す。


「平気…」


こうしているだけで嘘みたいに楽になれる。


「ねえ、愁。ちゃんと説明して?私には知らないことが多すぎるよ…」


美弦も不安だったのかもしれない。


事情も分からず俺と“あの人”の間に挟まれたんだ。


俺の様子に気を揉んでいたはずだ。


「…わかった」


俺は美弦の額に口づけて玄関に上がる。


「愁っ!!怪我してる!!」


美弦が目ざとく俺の手の傷に気がつく。


そこからは真っ赤な血が滴っていた。


「あ―…。忘れてた」


「消毒しなきゃっ!!」


美弦は慌てて救急箱を探し始めた―…。