「初めて会ったのは俺が17の時。美月は20歳でこの家の使用人だった。
あの頃は荒れてて…人が信じられなかったんだ。
でも美月だけは俺を理解してくれたんだ―…」


懐かしそうに愛おしそうに話す様子に胸が締めつけられていく―…。


目を閉じて何を想っているのかは歴然としていた。


「俺は美月を愛していたし、美月も俺のことを愛してくれた。
でも美月は半年後、何も言わず俺のもとを去った」


「どうして…っ…?」


お母さんに昔、1度だけねだった父親の話を思い出す。


あんなに幸せそうなお母さんは見たことがなかったのに…。


「美月は妊娠してたんだ。勿論俺の子供だ」


紘一さんは真剣な目をして私を見つめた。


「もしかして…私?」


紘一さんは優しく笑って答えてくれた。


「そうだよ、美弦は俺の子だ」


そう言ってクシャクシャと頭を撫でる。


温かい手だった。