「どこにいきたい?」
相手の肩に手を回して耳元で囁いてやる。
「どこでも。あんたが行きたい所でいいわ」
グロスが塗りたくってある唇がおれのものと重なる。
一緒に来ていた匡人もさっき女とどこかに消えた。
俺が高屋家に来てから既に7年が経っていた。
俺がこの7年で身につけたのはくだらない処世術ばかりで。
いつしか身も心も氷のように冷たくなっていた。
俺は…どこまで堕ちていけばいいんだろうか…?
夜の街で遊ぶようになって大分経つ。
誰も何も言わない。
唯一、紘一さんだけが会うたびに小言を言ってくる。
“あの人”ですら何も言わないのに。
いや、もう“あの人”とは決別したんだった…。
「ねえ、早く行こ?」
引っ付いてくる女の強請る声に不快感を覚えながらも俺は適当なホテルの扉をくぐった。



