「お前か?高屋に来た薄汚いガキって」
初対面は最悪だった。
初めて会った赤の他人にそう言われて怒らない人間がいるなら目の前に連れてきて欲しいもんだが。
ましてや同じ歳のガキに薄汚いだのガキだのと言われたくはない。
俺は当然怒り狂い匡人相手に大立ち回り。
匡人も匡人でその頃には完全に形成されつつあった“完璧なお坊ちゃま”の仮面を脱ぎ捨て蹴るわ殴るわの大騒ぎ。
「気に食わないなら話せばいいだろ?何のために言葉があるんだ?」
泥だらけになった俺たちを見て“あの人”が苦笑いをしながら頭を撫でてくれたのを今でも覚えている。
俺達は一度顔を見合わせると示し合わせたかのようにそっぽを向いた。
「…悪かったよ」
憎憎しげに、それでも微かな謝罪の気持ちを匂わせたひと言は俺にもきちんと届いていた。
…匡人が謝ったのを聞いたのは後にも先にもそれ一回きりだ。
今思えば、育ちが庶民の俺と生粋の金持ちの匡人では出会った時点ではかなりの差があったはずだ。
匡人から見てみればまさに薄汚いガキだったのだろう。
品の欠片も礼儀作法も身についてない。
周りの人間全員からも不要だと思われていた。
そんな自分を守る術を持たなかった俺は
なんて…。
…弱かったんだろうか。



