「お前はわかりやすいんだよ。美弦ちゃんに負けず劣らずな。いつか足元すくわれるぞ」
匡人が呆れたようにはあっと息を吐き出す。
すくわれるほど油断してねーよ。
「昔の夢を見た。それだけだ」
「…そうか」
俺と匡人の間にそれ以上の会話は要らなかった。
ガタガタと風が窓を揺らす。
思い出したくもない。あの頃のことなんて。
けれど思い出してしまうのは満たされている今の状況が長くは続かないということを暗示しているからなのか?
ただ…待ち焦がれていた。
逃げても逃げても追いかけてくる呪縛からひたすら走る日々が続いていた。
また…戻るのか…?
「今日ぐらいは大人しく寝てろ。あとで薬でも持ってってやるから」
全ての事情を察してくれた匡人は性格に似合わない気遣いなんかを見せてくれた。
「ん…」
吹きつける風がまた一段と強くなった。
匡人と最初に出逢ったときは絶対に親しくなるものかと意地になっていたのに、こいつに何もかも知れ渡ってるのが今は楽だ。
そう言えば匡人とは紘一さん以上に長い付き合いなんだなと沈んでいく意識の片隅でボンヤリと思った―…。



