「私、今まで父親は死んだとばかり思ってました…。お母さんも何も言わなかったし…。」
遠まわしに紘一さんのことを父親だなんて思えないって言ってるも同然だった。
紘一さんの顔が歪むのが分かる。
私は自分の言ったことを少し後悔してしまった。
お互い気まずさのためかそのまま数秒黙り込んだ。
しかしその沈黙を破ったのは紘一さんだった。
「初恋…だったんだ―…」
ポツリと発したセリフは私の心に小さな余韻を残して消えていった―…。
うな垂れていた紘一さんの顔が上を向き、目が合う。
「美月は俺の初恋で初めて愛した女性だ」
「初…恋―…」
確かめるように発音する。
紘一さんはゆっくりと頷いた。



