「適当に座って」
にぎやかな紘一さんの印象とは対称的に部屋はすっきりと片付いていた。
きっとこの家のお手伝いさんが毎日欠かさず手入れをしているからだろう。
床には埃ひとつなく、窓もピカピカに磨き上げられていた。
唯一机の上だけは書類らしき紙とパソコンが乱雑に置かれている。
紘一さんは手早くそれらを片付けると私の待つソファーに座った。
「聞きたいことがあるんだろ?何でも聞いて?」
「えっと…」
面と向かってそう言われると逆に言いにくい…。
とりあえず当たり障りのないところからにしてみよう…。
「この家って何部屋くらいあるんですか…?」
「多分、50部屋くらいあるんじゃないか?聞きたいことってそんな事…?」
紘一さんの目は正直に話せと訴えかけていた。
言わなきゃ…っ…!!
「お母さんとは…どういう関係だったんですか…?」
部屋の空気が重くなった気がした―…。
握り締めていた拳に汗が滲む。



