「お邪魔しま~す…」
「そんなに緊張するなよ」
愁は私に適当に座るように促して、自分はキッチンに向かう。
私は遠慮がちにソファーに浅く腰を下ろした。
初めて来た愁の家はひとりで暮らすには十分過ぎるほど広い。
グレイでまとめられたリビングにはテレビとテーブルとソファー。
多分あっちのドアは寝室だろう。
「はい。ちゃんと冷やせよ?」
「うん、ありがと」
愁からタオルを受け取り瞼にあてる。
ひんやりとした感触が火照った瞼に心地よかった。
愁に甘えてばかりだな…。
小さな心遣いが身にしみた。
「なあ…今から紘一さんに会いに行かないか?」
愁は私の隣に座り、躊躇いがちに提案する。
「今…から…?」
私はタオルを目から離し、ゆっくりと愁を見つめた。



