「目が覚めた?」


扉から現れたのは妖艶な笑みをたたえた澤村さんだった。


思い出した―…。


澤村さんに声をかけられたあと、誰かに後ろから布をかぶせられて…。


必死で抵抗したら殴られたんだ。


それから気づいたらここにいた。


「澤村さんが私をここに連れてきたの…?」


「そうよ?ここなら誰も来ないもの…」


目を細めて笑う澤村さんに背筋がゾッする。


誰も来ない。


誰も助けてくれない…。


「どうしてこんなこと…?」


「やあねぇ。わかってる癖に…」


そう言いながら澤村さんは私の所までやってきた。


「っ痛っ!!」


髪を引っ張られ無理矢理立ち上がせられる。


「許せないのよね。あんたみたいな身分をわきまえない女。愁のそばに相応しいのは私よ?彼の利用価値もわかっているのも私。わかったらあの学校から大人しく出て行って?」


利用価値…?


「あなたは…愁が好きなんですか…?」


「そうよ?私に釣り合う家柄と容姿を持ち合わせている人は滅多にいないの」


なに…それ…?