私と澤村さんが対面した次の日から嫌がらせがパタリと止んだ。
「なんか…逆に怖いよね…ここまですっかり止むと…」
凪ちゃんは不気味そうに言った。
「うん…」
私にはあの人の考えがさっぱりわからなかった。
あの日。
私は澤村さんに何も言えなかった。
負けないって誓った筈なのに完全に私の負けだった。
「美弦…元気だしなよっ!!帰りにどっか寄って行こっ!!」
元気のでない私を気遣い、凪ちゃんが励ましてくれる。
「凪ちゃん奢ってくれるの?」
「まさかっ!!割り勘に決まってんじゃん」
やっぱりね。
期待した私がバカだった…。
「行くの?行かないの?」
「行きます…」
「よろしい!!」
凪ちゃんは満足そうに頷いた。
それと同時にチャイムが鳴り、先生が入ってきた。
騒がしかった教室も直ぐに静かになる。
静か…。
授業中は誰もが話さずに真剣だ。
そう…静かすぎる。
私が感じている違和感はそこだった。
まるで何もなかったかのようだ。
澤村さんがこのままで済ますとは思えない…。
あの時の恐怖は未だに消えていない。
“なんか…逆に怖いよね…ここまですっかり止むと…”
凪ちゃんの言葉は的確に私の心を表していた―…。



