「ふ~ん…なるほどね…」
愁の首から腕を離した澤村さんは言い放った。
「その子とキスはできるのに私は触っちゃいけないの?そんなにその子が大事?」
知ってる…この人…。
キスしてたこと知ってるんだ…。
愁の制服をギュッと掴む。
「おまえには関係ない。今すぐ消えろ」
愁は不安で一杯の私の肩を抱いてくれた。
「ふ~ん。まあいいわ…。愁、これだけは覚えておいて。庶民と付き合っても何のメリットもないのよ?」
「うるせえ、さっさと消えろ」
澤村さんは愁に縋りつく私をチラッと見ながら廊下を歩いていった。
そして私の隣を通り過ぎる時、こう言った。
「許さないから…」
ドクンと心臓が嫌な音をたてた。
「美弦、大丈夫か?」
私の顔を覗きこむ愁を見てやっと全身の力が抜ける。
「しゅ…う…」
その場にへたりこみそうだった私を愁の腕が支えてくれる。
そしてそのまま私の体は愁の腕の中に納まっていた。
カタカタと震える体で思うことはひとつ。
“許さないから…”
澤村さんの言葉が頭から離れることはなかった―…。



