愁と帰るために教室まで荷物を取りに行く。
手早く荷物をまとめ、愁の待つ昇降口へと急いだ。
急がなきゃっ!!愁が待ってるっ!!
バタバタと廊下を走る。
「あなたが佐崎美弦?」
その声にピタッと私の足が止まる。
振り返るとそこには見知らぬ人物がいた。
「はい…そうですけど…?」
凪ちゃんが天使ならこの人は…小悪魔だ。
顔にかかる短い黒髪。
キレイに手入れされた白い肌。
爪にはキラキラとネイルが施されている。
醸し出すオーラに完全に圧倒される。
「私が誰だかわかる?」
彼女はさも当たり前のごとく聞いてきた。
誰だろ…こんな知り合いいたら絶対忘れないはず…。
記憶を探る。
「全然わからない?」
コクリと頷く。
すると彼女は妖しく笑った。
「私は澤村文音よ?」
そして彼女、澤村文音さんはクスクスと声に出して笑い出した。



