「全く油断も隙もないわねあの男!!」
私の頭を撫でながら凪ちゃんは匡人先輩に毒づく。
「凪ちゃん、どうしてここに?」
「HRも終わったし、具合が悪いなら帰った方がいいと思って呼びにきたの。そしたら会長はいるし美弦は半泣きだし…。こっちも説明して欲しいわよ」
私は事の顛末を包み隠さず凪ちゃんに話した―…。
「美弦…私…澤村ってどっかで聞いたことある気がする」
「ホントっ!?」
教室まで戻ってくると凪ちゃんは静かに口を開いた。
先ほどから顎に手を当てて悩んでいたようなのであえて何も聞かなかったのだ。
「でもごめん!!よく思い出せない…」
凪ちゃんは再びう~んと悩み始めてしまった。
凪ちゃんがド忘れするなんて珍しい…。
いつだって凪ちゃんはスラスラと答えを導き出す。
こうしていると凪ちゃんにも人間らしいところがあるんだなーと感心してしまう。
「ごめんねっ!!逆に悩ましちゃったみたいだね…。愁に直接聞いてみるよっ!!」
うん、気になるなら自分で聞いてみなきゃ!!
「そう?美弦がそう言うならいいけど…」
なんとなく釈然としない思いを抱えて私達は教室でた。



