「小さい時は父親がいないってよくからかわれて泣いてましたね。その度にお母さんが『美弦のお父さんは立派な人だったのよ』って…」
私が泣きつくたびにそう言ってあやしてくれたっけ…。
「実際会ってみて、まさかあんな人だとは思いませんでしたけどね」
うん、衝撃的だった。
先輩は柔らかく微笑むとテーブルに頬杖をついた。
「美弦ちゃんの母さんってどんな人だったの…?」
うーんっと少しだけ考える。
「優しくて…芯が強かったですよ。私を苛めてた男の子を凝らしめちゃうくらい大人気なかったけど…」
そういう所は紘一さんみたいだったなぁ…。
「いいお母さんだね…」
「はい」
先輩にそう言われるのはなにより嬉しい。
自慢のお母さん。
もう会えないけど…ずっと側にいる。
これからも見守っていてね。



