話が進めば進むほど、心臓が痛むのが感じる。


話の内容、声、表情、しぐさ

そのすべてが、その女性のものかと思うと胸が軋む。




「そっから2年ぐらい付き合って、結婚した。そのあと子どももできた。」




ほら、全然届かない。


手を伸ばせば触れることもできるのに

何故こんなにも、遠いのだろう。





「幸せな家庭を、築いてるんですね」





もう作戦は終了だ。


この事を由希子に報告しなくちゃ。



“やっぱり谷田はあたしなんかに興味なかったよ”って、


“とても大事な奥さんと子どもがいる人なんだよ”って。



そんな人の中に、あたしは入れない。







「いや」






耳に飛び込んできた谷田の声。


あたしの言葉を、否定した声。






「え?」


「離婚話、出てんだ。」