『今回の婚約は全部あの頑固じじいもとい高梨会長の独断だ。』
紘一さんは長いため息を吐いた
『美弦の婚約相手―…うちの会社と今度、業務提携するところの三男なんだ。』
ズキンと胸が痛くなった―…
ホントに会社のための婚約なんだ…
『相手は誰ですか…?』
恐ろしいくらい低い声で愁は紘一さんに尋ねた
愁も怒ってる…
愁がホントに怒ってる時は静かになることを知っていた
紘一さんはゆっくりとその名前を告げた
『グランドホテルの加賀美 恭也(カガミキョウヤ)。愁も聞いたことないか…?』
「加賀美…?」
私は愁より早く反応した
どっかで聞いたような…
おじいさんの家で聞いたのかな…?
あの時はぼんやりとしか覚えてなかったからなぁ…
『グランドホテル…業界最大手ですね…』
愁は静かに言い放った



