会場の扉の前ですでに私は緊張のピークに達していた


途中で着替えさせてもらったものの、場違いな感じは拭えない


ましてや自分が主役だと思うと気を失いそうだ


『美弦…大丈夫…?』


愁は心配そうに真っ青な私の顔を覗きこむ


大丈夫なはずないじゃない!!


『俺の隣にいれば大丈夫だから…』


愁は耳打ちした


「う…うん…」


返事もドギマギする…


愁は扉に手をかけた―…








が…


『あっ!!忘れてた…。』


そう言うと左手を私の前に差し出した


私があげたリングは愁の中指についていた


『美弦がつけなおして…?』


「うんっ!!」


私は喜びで胸を膨らませながらゆっくりと指輪を引き抜いた


『ホントは新しいやつ買おうと思ったんだけど…この方が俺達らしいだろ?』


「うん…。」


私は素直に頷いた


どんなに高価な指輪だって敵わない


私達の思い出がつまった指輪はお金じゃ買えない


私は愁の薬指に指輪をつけた