「ねえ、紘一さん…」


私は紘一さんの体を引き剥がした


「私…おじいさんともう一度話がしたい…」


私…こんな中途半端な状態は嫌…


愁がいるのに加賀美さんとの婚約の話をこれ以上進める訳にはいかない…


愁の冷たい眼の原因が私の煮え切らない態度にあるなら―…

きちんと話をつけなきゃ…


そうしないと愁に会う資格なんて無い



『美弦…父さんは話を聞く人じゃないよ…?』


紘一さんは諭すように言ったが

「わかってる…でも私…何度だって言う…婚約は嫌だって何回だって言うよ。」

決心は変わらなかった


『父さんは普段は家で仕事してるから好きな時に行くといいよ…』


紘一さんは観念したようにため息をついた


「うん。ありがと、紘一さん。」


やってみる…自分のことだもん


おじいさんに理解してもらおう…


私には愁がいるんだってこと

血筋とか関係ない

私は“高屋愁”っていう一人の人間が好きなんだって


もっと一生懸命伝えよう