「あ、勘違いしないで。 この子が私のところに来てくれて、 迷惑だって言ってるんじゃないのよ?」 [この子]といったとき、先生はおなかに手をあてた。 おかあさんの顔だ。 鳥海くんを思い出していたときのような、幸せそうな顔をしてる。 「だいじょうぶ、幸せよ」 「だけど、先生は、 好きじゃない人と……」 わたしのことじゃないのに、わたしのことのように、胸が苦しい。 「好きよ。 この子の父親のこと、愛してる」 先生は、ほほえんだまま、そう言った。